2024年9月13日
たかが便秘、されど便秘。70代以降で増える便秘には要注意! ~敬老の日を機会に腸活をすすめてみては~
2024年9月16日は敬老の日です。
敬老の日にちなみ、総務省が実施した調査によると、2023年の高齢者人口の割合は29.1%と過去最高となり、75歳以上の人口は初めて2000万人を超えました。また、便秘といえば女性に多いと思われがちですが、令和元年国民生活基礎調査によると、70代以降で便秘の有訴者率が増加し、男女比はほぼ同じになっています。
高齢者にとって便秘は男女共通の悩みと言えるでしょう。便秘は生活の質を下げるだけでなく、様々な疾患リスクなど健康にもかかわる可能性もあるため、たかが便秘と思わずにしっかり対処することが重要です。
便秘は排便回数が減るだけではない
日本消化管学会より刊行された「便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症」によると、便秘とは、『本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便・硬便、排便回数の減少や糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態』と定義されています。
すなわち、排便回数が減るだけでなく、便が硬くなる状態、排便時の過度ないきみ、残便感がある、便が出にくいなどの場合も便秘の可能性があります。また、便秘が慢性的に続くと、就労や睡眠などの日常生活に支障をきたすことに加え、腸の疾患など身体にも様々な支障をきたしうると言われています。
慢性便秘の有無は長生きにも関わる!?
慢性便秘は年齢とともに増加し、高齢者で多く見られる症状ですが、近年では腸内での影響だけでなく、心血管疾患等のリスク増加や生命予後との関連なども指摘されています。慢性便秘は、超高齢化社会の日本において、健康長寿を妨げる一因かもしれません。
また、高齢者では善玉菌であるビフィズス菌の比率が少なくなることが明らかになっており、慢性便秘と腸内細菌叢の関連も注目されています。長寿地区の一つである山梨県上野原市棡原における高齢者の腸内細菌叢においては、都市部の高齢者に比べてビフィズス菌が多かったという報告もあります。
このように、慢性便秘や腸内細菌叢の乱れは高齢者の健康にも大きく関わる可能性があるため、しっかりと対処することが重要です。また、快適な排便を続けることは、生活の質も上がり、心身ともに健康的な毎日を過ごすことにつながると考えられます。
高齢者で便秘が増える原因とは
高齢者で便秘が増える原因としては、以下の点などが考えられます。
腸の働きの低下
高齢者は、若年者に比べて腸の働きが低下し、便の大腸通過時間が長くなることが分かっています。便が腸内にとどまる時間が長くなると、便の水分量が減り硬くなってしまいます。また、直腸感覚の低下により便意を感じにくくなることも原因の一つです。
食事量の減少(食物繊維を含む)
食欲の低下、噛む力・飲み込む力の低下など様々な理由で、食事量が減少すると、便のかさが少なくなります。特に、食物繊維は便のかさを増やす材料になったり、腸内環境を整える善玉菌のエサになったりするので、摂取量が減ると便秘につながります。また、水分摂取量が減ることも原因の一つです。
疾患や薬剤の影響
患っている疾患や服用している薬の影響で便秘になることもあります。
便秘対策には生活習慣と腸内環境も重要
便秘対策として、まずは生活習慣を整えましょう。例えば、腹筋運動や歩行運動などの適度な運動、朝食後の排便習慣を身につけること、食物繊維の多い食事や十分な水分の摂取などが挙げられます。
また、腸内環境の悪化も便秘と関連するため、腸内環境を整えること(腸活)も重要です。善玉菌のエサとなる食物繊維の多い食事をとったり、乳酸菌・ビフィズス菌などのプロバイオティクスを摂取したりするのも対策の一つです。プロバイオティクスとは、十分量を摂取したときに宿主に有益な効果を与える生きた微生物のことで、摂取すると腸内環境を整え、排便回数の増加や便性状の改善、大腸通過時間の短縮などにつながります。
ビフィズス菌G9-1の便秘改善メカニズム
大腸の運動機能が低下し、便の大腸通過時間が増加することで、排便回数や排便量が減少する「大腸通過遅延型便秘」は高齢者にも多くみられる便秘です。また、高齢者ではビフィズス菌が少なく、実際にビフィズス菌を摂ることで便秘が改善することが報告されています。
そこで、今回は、大腸通過遅延型便秘に対するビフィズス菌G9-1の作用メカニズムに関する論文について内容を一部抜粋してご紹介します。
便秘改善作用
便秘モデル動物に、ビフィズス菌G9-1を摂取させたところ、1日あたりの便の個数、便の硬さが改善しました。また、腸管運動の亢進に伴い、便の大腸通過時間が短縮しました。
メカニズム
ビフィズス菌G9-1により腸内細菌叢が改善されると、腸管運動を促進する神経伝達物質であるセロトニンの産生が増加しました。また、腸のぜん動運動を促すアセチルコリンの産生も増加しました。これらの神経伝達物質の調整により、腸の運動を促進し便秘を改善したと考えられます。
最後に
便秘対策には、意識的な食習慣の改善や運動などに加えて、プロバイオティクスなどを活用して腸内環境を整えること(腸活)も大切です。
たかが便秘、されど便秘。家族に便秘に悩んでいる高齢者がいる場合は、腸活をすすめてみてはいかがでしょうか。まずは、無理のない範囲で対策を始め、続けてみましょう。それでも便秘に悩むときは自分に合った薬を選び、用法・用量に従って適切に服用しましょう。
今後も皆様が便秘で悩まない社会を実現するために、大正製薬は様々な研究を進めてまいります。