2025年6月30日

2025年6月30日

日本睡眠学会第49回定期学術集会において

オレキシン受容体拮抗剤「ボルノレキサント水和物」の

第Ⅲ相臨床試験結果を発表

日本睡眠学会第49回定期学術集会において

オレキシン受容体拮抗剤「ボルノレキサント水和物」の

第Ⅲ相臨床試験結果を発表


大正製薬株式会社[本社:東京都豊島区、社長:上原 茂](以下、当社)は、「不眠症」を適応症として開発を進めてきたオレキシン受容体拮抗剤「一般名:ボルノレキサント水和物(開発コード:TS-142)、以下、ボルノレキサント)」の第Ⅲ相臨床試験結果を、2025年6月28~29日に広島県で開催された日本睡眠学会第49回定期学術集会において発表いたしました。

本発表は、ボルノレキサントの不眠症を対象とした第Ⅲ相臨床試験である検証的試験(301試験)と長期投与試験(302試験)の最初の結果報告です。いずれの試験結果も安全性に大きな問題はなく、入眠困難と睡眠維持困難に対する改善効果と、日中機能の改善効果も認めたことから、ボルノレキサントは不眠症に対し有用であることが示唆されました。このほか、ボルノレキサントの前臨床データ(薬理および薬物動態)について3演題のポスター発表を行いました。

当社は、ボルノレキサントの開発を通して不眠症の新しい治療選択肢を提供することで、より多くの不眠症患者様のお役に立ちたいと考えています。

大正製薬株式会社[本社:東京都豊島区、社長:上原 茂](以下、当社)は、「不眠症」を適応症として開発を進めてきたオレキシン受容体拮抗剤「一般名:ボルノレキサント水和物(開発コード:TS-142)、以下、ボルノレキサント)」の第Ⅲ相臨床試験結果を、2025年6月28~29日に広島県で開催された日本睡眠学会第49回定期学術集会において発表いたしました。

本発表は、ボルノレキサントの不眠症を対象とした第Ⅲ相臨床試験である検証的試験(301試験)と長期投与試験(302試験)の最初の結果報告です。いずれの試験結果も安全性に大きな問題はなく、入眠困難と睡眠維持困難に対する改善効果と、日中機能の改善効果も認めたことから、ボルノレキサントは不眠症に対し有用であることが示唆されました。このほか、ボルノレキサントの前臨床データ(薬理および薬物動態)について3演題のポスター発表を行いました。

当社は、ボルノレキサントの開発を通して不眠症の新しい治療選択肢を提供することで、より多くの不眠症患者様のお役に立ちたいと考えています。

発表内容の概略

発表内容の概略


O14-3 新規オレキシン受容体拮抗剤ボルノレキサントの不眠症患者における有効性および安全性の検討 第3相検証試験(301試験)

O14-3 新規オレキシン受容体拮抗剤ボルノレキサントの不眠症患者における有効性および安全性の検討 第3相検証試験(301試験)


不眠症患者を対象に、ボルノレキサント5㎎、10㎎およびプラセボを2週間投与した無作為化プラセボ対照二重盲検試験です。睡眠日誌による睡眠潜時(sSL*1、主要評価項目)および睡眠効率(sSE*2、重要な副次評価項目)は投与1週時から改善を認め、投与2週時のベースラインからの変化量の平均値は5mg群、10㎎群ともにプラセボ群に対して有意な改善効果を示し(p<0.001)、また5mg群、10㎎群ともに日中機能の改善を認めました。大きな問題となる有害事象の発現は認められず、反跳性不眠*3や退薬症候*4などを示唆する所見はありませんでした。

不眠症患者を対象に、ボルノレキサント5㎎、10㎎およびプラセボを2週間投与した無作為化プラセボ対照二重盲検試験です。睡眠日誌による睡眠潜時(sSL*1、主要評価項目)および睡眠効率(sSE*2、重要な副次評価項目)は投与1週時から改善を認め、投与2週時のベースラインからの変化量の平均値は5mg群、10㎎群ともにプラセボ群に対して有意な改善効果を示し(p<0.001)、また5mg群、10㎎群ともに日中機能の改善を認めました。大きな問題となる有害事象の発現は認められず、反跳性不眠*3や退薬症候*4などを示唆する所見はありませんでした。

P2-37 新規オレキシン受容体拮抗剤ボルノレキサントの不眠症患者における安全性および有効性の検討 第3相長期投与試験(302試験)

P2-37 新規オレキシン受容体拮抗剤ボルノレキサントの不眠症患者における安全性および有効性の検討 第3相長期投与試験(302試験)


不眠症患者を対象に、ボルノレキサント5㎎、10㎎を26または52週間投与した無作為化オープン試験です。最大52週間投与における安全性に大きな問題はなく、反跳性不眠や退薬症候を示唆する所見も認められませんでした。有効性は、睡眠日誌の主観的睡眠パラメータ(sSL、sSE、総睡眠時間[sTST*5]、中途覚醒時間[sWASO*6]、中途覚醒回数[sNAW*7])を用いた評価で、5㎎群、10㎎群いずれも入眠困難および睡眠維持困難の改善を認め、それらは投与1週時から52週時まで維持しました。また、5㎎群、10㎎群ともに日中機能の長期改善も認めました。

不眠症患者を対象に、ボルノレキサント5㎎、10㎎を26または52週間投与した無作為化オープン試験です。最大52週間投与における安全性に大きな問題はなく、反跳性不眠や退薬症候を示唆する所見も認められませんでした。有効性は、睡眠日誌の主観的睡眠パラメータ(sSL、sSE、総睡眠時間[sTST*5]、中途覚醒時間[sWASO*6]、中途覚醒回数[sNAW*7])を用いた評価で、5㎎群、10㎎群いずれも入眠困難および睡眠維持困難の改善を認め、それらは投与1週時から52週時まで維持しました。また、5㎎群、10㎎群ともに日中機能の長期改善も認めました。

P2-39 新規オレキシン受容体拮抗剤ボルノレキサントのラット脳波測定における睡眠誘導作用

P2-39 新規オレキシン受容体拮抗剤ボルノレキサントのラット脳波測定における睡眠誘導作用


ボルノレキサントの睡眠誘導および協調運動機能に対する作用を、ラットを用いて検討しました。その結果、ボルノレキサントは、協調運動機能には影響を及ぼさず、単独投与で睡眠誘導作用を示したほか、GABAA受容体に作用する睡眠薬との併用や切り替えにおいても、睡眠誘導作用を示す不眠症治療薬となり得ることが示唆されました。

ボルノレキサントの睡眠誘導および協調運動機能に対する作用を、ラットを用いて検討しました。その結果、ボルノレキサントは、協調運動機能には影響を及ぼさず、単独投与で睡眠誘導作用を示したほか、GABAA受容体に作用する睡眠薬との併用や切り替えにおいても、睡眠誘導作用を示す不眠症治療薬となり得ることが示唆されました。

P2-40 新規オレキシン受容体拮抗剤ボルノレキサントのin vitro 薬理プロファイル及びラットにおける受容体占有率

P2-40 新規オレキシン受容体拮抗剤ボルノレキサントのin vitro 薬理プロファイル及びラットにおける受容体占有率


ボルノレキサントのin vitro 薬理プロファイルと受容体占有率を検討しました。その結果、ボルノレキサントはOX1およびOX2受容体に対して高い結合親和性並びに強力な阻害作用を有するデュアルオレキシン受容体拮抗剤でした。また、ラット脳内のOX1およびOX2受容体を用量依存的に占有し、その占有率は血漿中濃度と同様の経時推移を示したことから、血漿中ボルノレキサント濃度が薬効予測の有用な指標となる可能性が示唆されました。

ボルノレキサントのin vitro 薬理プロファイルと受容体占有率を検討しました。その結果、ボルノレキサントはOX1およびOX2受容体に対して高い結合親和性並びに強力な阻害作用を有するデュアルオレキシン受容体拮抗剤でした。また、ラット脳内のOX1およびOX2受容体を用量依存的に占有し、その占有率は血漿中濃度と同様の経時推移を示したことから、血漿中ボルノレキサント濃度が薬効予測の有用な指標となる可能性が示唆されました。

P2-41 新規オレキシン受容体拮抗剤ボルノレキサントの非臨床薬物動態

P2-41 新規オレキシン受容体拮抗剤ボルノレキサントの非臨床薬物動態


ボルノレキサントの非臨床薬物動態をラットおよびイヌを用いて検討しました。ボルノレキサントは、速やかな血漿中濃度の上昇と短半減期で血漿中から消失することに加え、脳脊髄液中濃度も血漿中濃度と同様の推移を認めたことから、速やかに入眠効果を発現し、持ち越し効果のリスクが少ない理想的な薬物動態プロファイルを有する不眠症治療薬となり得ることが示唆されました。

ボルノレキサントの非臨床薬物動態をラットおよびイヌを用いて検討しました。ボルノレキサントは、速やかな血漿中濃度の上昇と短半減期で血漿中から消失することに加え、脳脊髄液中濃度も血漿中濃度と同様の推移を認めたことから、速やかに入眠効果を発現し、持ち越し効果のリスクが少ない理想的な薬物動態プロファイルを有する不眠症治療薬となり得ることが示唆されました。

【参考】ボルノレキサントについて

【参考】ボルノレキサントについて


ボルノレキサントはオレキシン受容体(OX1およびOX2受容体)に対して選択的に作用するオレキシン受容体拮抗剤で、当社大宮研究所で創製されました。オレキシン受容体阻害活性の維持と脂溶性の低減という特徴を併せ持ち、消失半減期(t1/2)が短いという薬物動態プロファイルを示すことから、不眠症治療薬の課題の1つである「投与翌日の持ち越し効果」の懸念が少ない不眠症治療薬となり得る可能性があります。今回の学会発表以外にも、下記論文を発表しています。

ボルノレキサントはオレキシン受容体(OX1およびOX2受容体)に対して選択的に作用するオレキシン受容体拮抗剤で、当社大宮研究所で創製されました。オレキシン受容体阻害活性の維持と脂溶性の低減という特徴を併せ持ち、消失半減期(t1/2)が短いという薬物動態プロファイルを示すことから、不眠症治療薬の課題の1つである「投与翌日の持ち越し効果」の懸念が少ない不眠症治療薬となり得る可能性があります。今回の学会発表以外にも、下記論文を発表しています。

  •  Futamura A, et al. Discovery of ORN0829, a potent dual orexin 1/2 receptor antagonist for the treatment of insomnia. Bioorg Med Chem. 2020;28(13):115489.
  • Uchiyama M, et al. Effects of TS-142, a novel dual orexin receptor antagonist, on sleep in patients with insomnia: a randomized, double-blind, placebo-controlled phase 2 study. Psychopharmacology (Berl). 2022;239(7):2143-2154.
  • Kambe. D, et al. Pharmacokinetics, pharmacodynamics and safety profile of the dual orexin receptor antagonist vornorexant/TS-142 in healthy Japanese participants following single/multiple dosing: Randomized, double-blind, placebo-controlled phase-1 studies. Basic Clin Pharmacol. Toxicol. 2023;133(5):576-591.
  • Konno Y, et al. Preclinical metabolism and the disposition of vornorexant/TS-142, a novel dual orexin 1/2 receptor antagonist for the treatment of insomnia. Pharmacol Res Perspect.2024;12:e1183.
  • Hikichi H, Tokumaru Y et al. Preclinical Pharmacological Profiles of Vornorexant, A Novel Potent Dual Orexin Receptor Antagonist. J pharmacol Exp Ther. in Press.
  •  Futamura A, et al. Discovery of ORN0829, a potent dual orexin 1/2 receptor antagonist for the treatment of insomnia. Bioorg Med Chem. 2020;28(13):115489.
  • Uchiyama M, et al. Effects of TS-142, a novel dual orexin receptor antagonist, on sleep in patients with insomnia: a randomized, double-blind, placebo-controlled phase 2 study. Psychopharmacology (Berl). 2022;239(7):2143-2154.
  • Kambe. D, et al. Pharmacokinetics, pharmacodynamics and safety profile of the dual orexin receptor antagonist vornorexant/TS-142 in healthy Japanese participants following single/multiple dosing: Randomized, double-blind, placebo-controlled phase-1 studies. Basic Clin Pharmacol. Toxicol. 2023;133(5):576-591.
  • Konno Y, et al. Preclinical metabolism and the disposition of vornorexant/TS-142, a novel dual orexin 1/2 receptor antagonist for the treatment of insomnia. Pharmacol Res Perspect.2024;12:e1183.
  • Hikichi H, Tokumaru Y et al. Preclinical Pharmacological Profiles of Vornorexant, A Novel Potent Dual Orexin Receptor Antagonist. J pharmacol Exp Ther. in Press.

*1 sSL(subjective Sleep Latency): 睡眠日誌を用いた主観的評価による睡眠潜時(就床から眠りにつくまでの時間)のことです。不眠症治療薬の入眠効果を評価する指標の一つです。

*2 sSE(subjective Sleep Efficiency): 睡眠日誌を用いた主観的評価による睡眠効率(就床時間のうち睡眠時間が占める割合)のことです。不眠症治療薬の睡眠維持効果を評価する指標の一つです。

*3 反跳性不眠: 睡眠薬の服用を中止した際に現れる、服用前より強い不眠症状のことです。

*4 退薬症候: 長期間薬物を服用後に服用中止や減量することで、不安、不眠、震えなどの症状が一過性に現れる状態のことです。

*5 sTST(subjective Total Sleep Time): 睡眠日誌を用いた主観的評価による総睡眠時間(実際に眠っていた時間)のことです。不眠症治療薬の睡眠維持効果を評価する指標の一つです。

*6 sWASO(subjective Wake After Sleep Onset): 睡眠日誌を用いた主観的評価による中途覚醒時間(夜中に目が覚めてしまい眠れなかった時間)のことです。不眠症治療薬の睡眠維持効果を評価する指標の一つです。

*7 sNAW(subjective Number of AWakenings): 睡眠日誌を用いた主観的評価による中途覚醒回数(夜中に目が覚めてしまった回数)のことです。不眠症治療薬の睡眠維持効果を評価する指標の一つです。

*1 sSL(subjective Sleep Latency): 睡眠日誌を用いた主観的評価による睡眠潜時(就床から眠りにつくまでの時間)のことです。不眠症治療薬の入眠効果を評価する指標の一つです。

*2 sSE(subjective Sleep Efficiency): 睡眠日誌を用いた主観的評価による睡眠効率(就床時間のうち睡眠時間が占める割合)のことです。不眠症治療薬の睡眠維持効果を評価する指標の一つです。

*3 反跳性不眠: 睡眠薬の服用を中止した際に現れる、服用前より強い不眠症状のことです。

*4 退薬症候: 長期間薬物を服用後に服用中止や減量することで、不安、不眠、震えなどの症状が一過性に現れる状態のことです。

*5 sTST(subjective Total Sleep Time): 睡眠日誌を用いた主観的評価による総睡眠時間(実際に眠っていた時間)のことです。不眠症治療薬の睡眠維持効果を評価する指標の一つです。

*6 sWASO(subjective Wake After Sleep Onset): 睡眠日誌を用いた主観的評価による中途覚醒時間(夜中に目が覚めてしまい眠れなかった時間)のことです。不眠症治療薬の睡眠維持効果を評価する指標の一つです。

*7 sNAW(subjective Number of AWakenings): 睡眠日誌を用いた主観的評価による中途覚醒回数(夜中に目が覚めてしまった回数)のことです。不眠症治療薬の睡眠維持効果を評価する指標の一つです。