2022年9月 7日

京都大学・弘前大学との共同研究でインフルエンザをモデルとして
健康ビッグデータから病気の罹患リスクが高いグループ分類手法を構築

大正製薬株式会社[本社:東京都豊島区 社長:上原 茂](以下、当社)は、国立大学法人京都大学大学院医学研究科(奥野恭史教授:以下、京都大学大学院)および国立大学法人弘前大学(以下、弘前大学)との研究チームにより、インフルエンザをモデルとして健康ビッグデータから病気の罹患リスクが高いグループの分類手法を構築いたしました。

背景

当社は、近年の健康意識の高まりによる、生活者の多様な健康ニーズに応えるため、弘前大学と2021年4月より共同研究講座を開設し連携を進めて参りました。

本共同研究講座では、弘前大学が実施してきた「岩木健康増進プロジェクト」で得られた健康ビッグデータと当社が蓄積してきた研究知見を組み合わせた解析による、かぜ・毛髪・疲労に関連する症状と生体関連因子の関係性解明を研究課題としており、解析の知見を活用した生活者に寄り添ったソリューションの提供によって、予防や未病ケアを含めたトータルケアの実現を目指しております。

しかしながら、健康ビッグデータ解析による病気の罹患リスクの高い特徴の特定にあたり、今回用いるデータが約3000項目×数千、数万人と膨大なデータ量となるため、一般的な相関解析やクラスタリング手法を適用するだけでは罹患リスクの特徴の抽出や、その関係性の把握が困難でした。

※弘前大学・弘前市・青森県総合健診センターが主催し、弘前市岩木地区において2005年より実施している、同地区住民を対象とした大規模住民合同健診・健康指導などの住民の健康増進活動

研究成果

これら課題に対し、京都大学大学院の奥野恭史教授らおよび本共同研究講座との研究チームで検討を重ねた結果、健康ビッグデータから病気の罹患リスクの高い特徴的なグループ(体質・生活習慣・環境等)を抽出できる、独自の層別解析手法の構築に至りました。

本手法の構築は、岩木健康増進プロジェクト2019年度健診データ(全1062名、内1年以内のインフルエンザ罹患あり121名)を用いてインフルエンザ罹患をモデルとして実施し、解析の手順は以下の3つのステップを経て行いました。

① 関連因子の抽出
 機械学習によってビッグデータから病気の罹患に関連する因子を選抜する

② 因果関係の解析
 ①で得られた因子について、因果分析手法の一つであるベイジアンネットワーク解析によって因果関係をモデル化する

③ タイプ分類
 ②で得られたネットワーク解析結果を活用した階層クラスタリングによって、病気の罹患リスクの高い特徴的なグループに分類する

その結果、インフルエンザ罹患リスクの高い特徴的なグループとして血糖値が高めのグループ、肺炎歴があるグループ、睡眠状況が悪いグループなどの存在が示唆されました。これら特徴の多くはインフルエンザを含む上気道感染症の罹患要因に関する先行研究と整合性がとれており、本手法は有用であると考えられました。

当該研究成果を、2022年6月10日~11日に仙台で開催された第4回日本メディカルAI学会にて発表致しました。

解析手順および結果イメージ

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【本知見の活用及び今後の展望】

今回、インフルエンザをモデルとして、健康ビッグデータ解析によって病気の罹患リスクが高い特徴的なグループを見出すことが可能であることを確認致しました。今回1年間のデータを使用して解析を行いましたが、今後も多年度の健康ビッグデータの蓄積および解析手法の改良・検証を重ねて参ります。

さらには、かぜの罹患しやすさ、薄毛や白髪の要因、日常生活における疲労などに本手法を応用することで、体質や健康リスクに寄り添った効果的な治療・予防に関する新たな知見を見出すとともに、研究成果を活用したソリューションの提供により、健康と美を願う生活者のより豊かな暮らしの実現に貢献して参ります。



その他、大正製薬の研究成果については、大正製薬 研究開発サイトでもご確認いただけます。