2021年3月15日

MITOL発現促進作用による白髪抑制の可能性 -牡丹(ぼたん)由来エキスに毛包のミトコンドリア機能を高める作用を発見-

大正製薬株式会社[本社:東京都豊島区 社長:上原 茂](以下、当社)は、柳茂教授(学習院大学理学部)と共同で、ミトコンドリアユビキチンリガーゼMITOL(別名:MARCH5 以下、MITOL*1が毛包や皮膚のアンチエイジングにおいて重要な働きを有することを解明してきました。

そしてこの度新たに、ボタンピエキス*2が毛包角化細胞のMITOL発現を高めること、その作用はタウリン*3との併用によりさらに高まることを見出しました。

*1 MITOL:ミトコンドリアの形態制御や品質管理などに関わる分子

*2 ボタンピエキス:ボタン科・牡丹の根の皮から抽出されたエキス

*3 タウリン:身体の恒常性維持に関わるアミノ酸の一種で当社栄養ドリンクにも配合

以下に、研究の詳細をご説明します。


〇これまでの知見:MITOLの発現低下は白髪などの髪の老化につながる

ミトコンドリアは生命活動に必要なエネルギーを合成する細胞小器官であり、その機能異常が種々の疾患の病態や老化と関連することが報告されています。また、ミトコンドリアの形態はダイナミックに変化しており、形態がエネルギー合成の効率に大きく影響することや、エネルギー合成の過程で種々の老廃物が蓄積し、それがミトコンドリアの品質に影響を及ぼすことが知られております。柳教授らのこれまでの研究により、MITOLはミトコンドリアの形態制御と老廃物の除去(品質管理)の両方において、重要な役割を果たすことが解明されております。

当社は、柳教授と共同で毛包をはじめとした皮膚の老化とMITOLの関係について研究を進めてきました。これまでに、頭皮や毛包を構成する角化細胞においてMITOLの発現が低下すると、17型コラーゲン(COL17A1)*4などの発現低下が起こり、白髪をはじめとした髪の老化につながることを見出しております(図1)。

*4 17型コラーゲン:毛包バルジ領域に存在する毛包幹細胞などを維持するのに重要なコラーゲン。髪の色素を生み出す色素細胞の源である色素幹細胞は、毛包幹細胞に隣接し、毛包幹細胞によって支えられるため、17型コラーゲンの低下は色素幹細胞の減少・白髪発生につながる。

2021031501-f1.jpg

図1.MITOL発現低下による白髪発生について想定されるメカニズム


〇新たな知見:ボタンピエキスに毛包のMITOL発現を高める作用を発見

MITOLの発現を上昇させる素材をスクリーニングしたところ、ボタンピエキスは毛包角化細胞のMITOL発現を高めることを見出しました。さらに、ボタンピエキスのMITOL発現促進作用は、タウリンと組み合わせることにより、さらに高まることを見出しました(図2・図3)。

2021031501-f2.jpg

図2.毛包角化細胞におけるボタンピのMITOL発現促進作用(ボタンピ単独)

2021031501-f3.jpg

図3.毛包角化細胞におけるボタンピのMITOL発現促進作用(ボタンピとタウリンの併用)


〇本知見の活用及び今後の展望

毛包角化細胞においてMITOLの発現を高めるボタンピエキス及びタウリンとの組み合わせは、白髪抑制をはじめとして毛包のアンチエイジングに活用できる可能性があります。

当社は今後も、MITOLの新たな機能やMITOL発現を促進させる素材の作用について、さらなる研究を進めてまいります。そして、研究で得られた知見を活かし、髪や皮膚のエイジングケアにつながる製品を開発していきたいと考えております。