2020年12月17日

シミにおけるターンオーバーと鉄代謝の関係を発見

大正製薬株式会社[本社:東京都豊島区 社長:上原 茂](以下、当社)は、肌に存在する鉄の働きに着目し、シミにおけるターンオーバーと鉄代謝の関係について新たな知見を見出しました。また、本知見の一部を日本研究皮膚科学会 第45回年次学術大会・総会(2020年12月)にて発表いたしました。

老人性色素斑などのシミはメラニン産生に関わる分子の発現上昇と表皮のターンオーバー(肌の新陳代謝)低下により引き起こされることが知られています。また、鉄は細胞の増殖やエネルギー産生に関わる事が知られており、肌においても何らかの重要な働きをしていると考えられますが、シミとの関係については明らかになっていません。

そこで、肌における鉄の働きを明らかにするため、船坂 陽子教授(日本医科大学医学部 皮膚科学)と共同研究を実施し、シミのある肌とシミのない肌で鉄代謝に関わる因子の発現を比較評価し、鉄と表皮ターンオーバーの関係を検討いたしました。その結果、シミのある部位ではシミのない部位と異なる層(表皮の中層)で細胞増殖が起きていることを確認しました(図1)。

また、シミのない部位では細胞に鉄を取り込むトランスフェリン受容体1が主に表皮の下層で発現していますが、シミのある部位では表皮の中層でその発現が亢進するなど、鉄代謝に関わる因子の発現に異常が生じていることが明らかとなりました(図2)。 

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健康な肌では表皮下層で細胞が増殖し、メラニンを含有した表皮細胞が表皮上層に押し上げられ、表面から剥がれ落ちること(ターンオーバー)によりメラニンが排泄されます。一方、シミのある肌では、表皮の中層で細胞増殖が亢進しているために、メラニンを取り込んだ表皮細胞が表皮下層にとどまると考えられますが、表皮の中層で鉄の取り込みが亢進していることがそのターンオーバー低下の要因となっている可能性が考えられました(図3)。

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そこで、我々は表皮細胞を用いてこれらの鉄代謝異常を改善する素材探索を行い、アーティチョークエキス、ベニバナエキス、ドクダミエキスが、鉄代謝関連遺伝子の発現を調節することを見出しました。(特許6763497、特許6781924、特許6781925)
また、これらの素材はメラニンを含む表皮細胞において、ターンオーバーの指標となる遺伝子(インボルクリン、トランスグルタミナーゼ1)の発現を増加させたことから、表皮細胞のターンオーバーを促進させる可能性が示唆されました(図4)。

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以上のように、肌における鉄代謝異常とシミの関係について新たな知見を見出しました。また、アーティチョークエキス、ベニバナエキス、ドクダミエキスが表皮細胞の鉄代謝異常を改善し、さらに、ターンオーバーを促進する可能性が示唆されました。
当社は今回の研究成果を活用し、製品開発を進めてまいります。