セルフメディケーションSelf-medicationSTORY 04

OTC薬理

有効成分の作用機序を追求し、有効性・安全性の向上を目指す

大正製薬では、OTC医薬品の薬理研究を専門に行う部署を1996年に設置し、有効性や安全性の向上を目指した研究を長年にわたり続けてきました。OTC医薬品に用いられる化合物といえども、その作用機序の全貌が解明されていないものも多く、未知の機序を明らかにすることができれば、多くの症状・疾患の改善や副作用の軽減等への応用が期待できると考えています。
疲労、かぜ、脱毛をはじめとした生活の質(QOL)の低下につながるような症状・疾患に対して、最先端の生理・病理的アプローチを活用した薬理研究を中心に、生活者の悩みを解決するための積極的な研究活動を進め、その成果を幅広い製品の開発に活用しています。

エテンザミドの鎮痛作用機序を新たに解明

エテンザミドは非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)に分類される解熱鎮痛成分です。

大正製薬では以前から、臨床試験や薬理試験を通じて、同じくNSAIDに分類されるイブプロフェンをエテンザミドと併用することでその鎮痛効果が向上すること、また副作用である胃粘膜傷害を軽減できることを研究・報告してきました。

このようなエテンザミドの有効性や副作用低減作用に着目し、詳細な作用機序の解明に努めた結果、エテンザミドがセロトニン2B受容体を濃度依存的に阻害することを世界で初めて明らかにしました。さらに、エテンザミドが脊髄におけるセロトニン2B受容体を阻害することにより鎮痛作用を発揮すること、"頭痛もち"のように慢性的な痛みに悩まされている方への有効性が期待されることも確認しました。

また、エテンザミドに見出されたセロトニン2B受容体阻害作用が、イブプロフェンにより惹起される胃粘膜傷害の抑制につながることを見出しました。すなわち、新しく見出されたエテンザミドの作用機序が、医薬品の有効性の向上だけでなく、副作用の軽減にも役立つ可能性があることを明らかにしました。

このような作用機序解明は、次なる製品開発の重要な糸口となっています。

Formalin-evoked Nociceptive Behaviorsのグラフ
Ibuprofen(IBP)-induced Gastric Damageのグラフ

本研究成果のうち、鎮痛作用機序をまとめた論文は、日本薬学会が刊行するBiological and Pharmaceutical Bulletin誌の表紙にも選定されました。

Uncovering How Ethenzamide Relieves Painの図

ラットのホルマリンテストにおける鎮痛作用の研究から、エテンザミドが脊髄において、セロトニン2B受容体阻害作用を介して鎮痛作用を発揮することを見出した。

アセトアミノフェンの作用機序のひとつを解明

アセトアミノフェンは解熱鎮痛薬の主成分として全世界で最も使用されているもののひとつですが、その詳細な作用機序がすべて明らかになっているわけではありませんでした。

また、痛みは末梢神経から脊髄後角という部位を介して大脳皮質へと上行性に伝達されることがよく知られていますが、脳幹部から脊髄後角へ下行して過剰な疼痛を抑制するシステム、すなわち下行性疼痛抑制系が存在することがわかってきています。

これらのことから、大正製薬では、アセトアミノフェンの鎮痛作用機序について、下行性疼痛抑制系に着目して研究を進めました。その結果、アセトアミノフェンが下行性疼痛抑制系を活性化することで、鎮痛作用を発揮していることを見出しました。

下行性疼痛抑制系の機能がストレス等の心理的要因によって阻害されること、そしてそれにより疼痛伝達が増強してしまうこともわかってきています。このため、例えばストレスが原因の頭痛に悩まされている方にはアセトアミノフェンが有効と考えられます。

このような知見は、アセトアミノフェンを配合した新しいコンセプトの製品開発に活用されています。

寒冷刺激負荷による肩こり様症状の筋痛に対して、アセトアミノフェンが鎮痛作用を示すこと、その作用は、脊髄後角で5-HT3受容体及びα2アドレナリン受容体を介して疼痛を抑制するモノアミン作動性の下行性疼痛抑制系を賦活するメカニズムであることを示した。

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