セルフメディケーションSelf-medicationSTORY 01

固形製剤技術

小さな錠剤に込められた大きな想いと多彩な技術

薬局などで購入できるOTC医薬品ではもちろん、医師が処方する医療用医薬品でもよく利用されるのが錠剤です。「疾患の原因や症状を緩和する"有効成分"を固めただけ」というイメージを持たれがちですが、実はそうではありません。医薬品に求められる「安全性」「品質」をすべて確保し、"効き目"を最大限発揮できるように、錠剤には有効成分以外に多様な添加剤を配合しています。
錠剤設計には、高度な技術はもちろん、有効成分・添加剤に関する深い知識や探究心、挑戦心が求められます。大正製薬が開発・製造している一つひとつの製品には、長年蓄積してきた多彩な技術・ノウハウと、生活者の方の健康に貢献したいという強い想いが込められています。

固形製剤の設計技術を駆使し、素早い崩壊・溶解を実現

速さへのこだわり

例えば、頭が痛いときに頼りになる解熱鎮痛薬。痛みを早く解消したい生活者のニーズに対応するため、大正製薬は、常に効きの速さと服用のしやすさにこだわった設計技術の開発にチャレンジしています。

有効成分は消化管内で速やかに溶けて体内に吸収される必要があります。しかし、固形製剤である錠剤を飲んでもそのままでは水に触れる面積が小さいため、錠剤中に含まれる有効成分がなかなか溶け出しません。これを速く溶かすためには、錠剤が胃の中で崩れて細かい粒子の状態に分散する「崩壊性」と、粒子の中から有効成分が溶け出す「溶解性」を高める必要があります。大正製薬ではこの点に着目して研究を重ねました。

崩壊性の改善

錠剤を崩壊させるために効果的な添加剤が崩壊剤です。この崩壊剤は水を吸うと膨潤する性質があります。水とともに錠剤を飲むと、胃の中で水を吸収した崩壊剤が錠剤内部で膨らみ、錠剤の構造が破壊されて崩壊し細かい粒子の状態に分散されます。

研究の結果、用いる崩壊剤の種類や添加方法、添加量に最適解を見つけ出すことができ、少ない添加量で従来品よりも優れた崩壊性を付与することが可能となりました。

崩壊時間の比較図。従来品よりも崩壊時間を短縮
添加剤配合量の比較図。従来品よりも添加剤の配合量を削減

溶解性の改善

有効成分の多くは有機化合物からなり、水に溶けにくいものも多数あります。また粒子の中から溶け出すためには、まず水に触れる必要がありますが、成分によっては水をはじくものもあります。このため有効成分を溶け出しやすくするためには、水なじみをよくする工夫と、溶けやすくする工夫が必要になります。

例えば、優れた消炎鎮痛効果を有し、解熱鎮痛薬によく用いられる「イブプロフェン」も、水に溶けにくい成分のひとつです。大正製薬では、このイブプロフェンを速く溶かすために、"溶けやすさ"と"水なじみ"の両面からアプローチしました。

"溶けやすさ"を向上させるためには、水に触れる面積を大きくすることが有効です。このため、もともとスギ花粉(30~40μm)ほどの大きさだったイブプロフェンをさらに細かくして全体の表面積を大きくすることに挑戦しました。ただ、イブプロフェンは熱で融けやすく、微細化処理の際に発生する熱が課題となります。そこで生産部門と連携し、微細化処理条件を緻密に設定することで、従来よりも細かく表面積を大きくしたイブプロフェンに加工することが可能となりました。

また、"水なじみ"をよくするには、水なじみのよい添加剤で表面を覆い、水を引き寄せることが有効です。水なじみのよい添加剤は種々ありますが、その中でも表面積を大きくしたイブプロフェンを少量で覆うことができる無機ナノ微粒子を選定し、種類や添加量をトライアンドエラーで細かく調節。できるだけ少ない添加剤量で水なじみをよくしたイブプロフェンに仕上げることができました。

水なじみのよい添加剤と一般的な添加剤での比較図

これらの研究成果をもとに、できるだけ少ない添加剤の配合で服用性・崩壊性・溶解性に優れた錠剤の設計を可能とする「コンパクタブ技術」を構築し、本技術を活用した解熱鎮痛薬を開発できました。この成果のうち、添加剤の削減を可能とする知見について学会でも報告しています。

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